今日は2026年7月18日。カレンダーを見ると、あと10日で Model Context Protocol の仕様が切り替わる。

6月中旬のこのサイトは「MCPはフレームワークを可能にするはずが、カオスを可能にした」と書いた。あれから約1ヶ月。公式ブログが2026-07-28 Release Candidateを出し、「史上最大の改訂」と宣言した。カオスの次に来るのは、規格側からの強制整理だ。

ん?——「セッションを捨てる」が標準になる

RCの中身で一番気になるのは、破壊的変更リストの先頭近くにある SEP-2086: Sessionless だ。これまで MCP の多くの実装は、接続のあいだ状態を持ち、ツール一覧や認可をセッションに載せていた。それをデフォルトで捨てる

なぜ今か。エージェントが長く動き、ツールが増え、接続が切れ、再接続し、別プロセスに引き継がれる——という運用が当たり前になったからだ。セッションに依存した設計は、デモでは綺麗に見えて、本番の再試行と水平スケールで破綛する。規格が後から「状態を持つな」と言うのは、現場が先に壊れた証拠でもある。

併記される破壊的変更も、同じ方向を向いている。

  • SEP-2085:タスク中心の実行モデルへ寄せる
  • SEP-2133:OAuth まわりの整理(認可の持ち方を揃える)
  • その他、クライアント/サーバー双方に手を入れる変更が計6本

SDK 側も同日に beta が並ぶ。TypeScript / Python / Go / Rust / Java / C# / Kotlin / PHP / Ruby / Swift——言語横断で「7/28に合わせて直せ」という圧力がかかる。エージェントフレームワーク作者にとって、これは機能追加の週ではなく互換性の週になる。

同じカレンダーに、別の期限が載っている

Anthropic は6月12日に Fable 5 を一時停止し、7月1日に再投入した。公式の説明は明確で、需要が供給を上回った、というものだ。再投入後の条件は、既存の Claude 有料プランユーザー向けに追加クレジット枠を7月末までという時限付きだった。

つまり同じ7月末に、二つの時計が鳴る。

  1. MCP:プロトコルの破壊的変更が final になる(7/28)
  2. Fable:試用を支えていたクレジット枠が閉じる(7月末)

片方は「エージェントがツールとどう話すか」の規格、もう片方は「人がどんなエージェント体験を試せるか」の製品枠。レイヤーは違う。だが現場の感覚では同じ問題にぶつかる——長く動くエージェントを、誰が、どの契約で、どのプロトコルで支えるのか

6月23日の記事は「4日で終わったトライアル」と書いた。あれは製品側の供給限界だった。今回は規格側が、接続の持ち方そのものを変える。トライアルが短すぎた話と、セッションが長すぎた話は、鏡合わせに見える。

エージェント実装者が今やること(抽象論ではなく)

7/28まで10日。やることは華麗ではない。

  1. セッション前提のコードを洗い出す:ツール一覧キャッシュ、認可トークンの接続寿命、再接続時の「続きから」ロジック。
  2. タスクIDで再試行できるか確認する:SEP-2085 の方向に合わせ、失敗時に「同じタスクを別接続で再開」できる形に寄せる。
  3. OAuth と API キーの境界を明文化する:SEP-2133 前後で、誰がどの秘密を持つかが変わる。エージェントに長寿命シークレットを埋め込んでいるなら、今が整理のタイミング。
  4. SDK beta を触るなら本番と隔離する:同日 beta は「先に壊して直す」用。本番は RC の migration note を読んでから。

「フレームワークを増やせ」ではない。「接続の前提が消える前に、自分のエージェントの前提を数えろ」だ。

周辺で動いていること(短い注記)

Google の DiffusionGemma(拡散ベースの言語モデル、最大約1,100 tok/s 級の速さ訴求)は、6月時点でこのサイトも扱った。速さのトレードオフは変わっていないが、今日のコアではない。速さのレースと、プロトコルの寿命のレースは別トラックだ。

3D / モーキャプ側では、MediaPipe 系のマーカーレス推定を Blender に流す OSS パイプラインが細く続いている。こちらも「今日の発見」ではなく、MCP の sessionless 化がクリエイティブツール連携(長いジョブ、切断、再開)に効いてくる伏線として残しておく。

結論:10日は短い

MCP は「エージェントがツールを呼べる共通語」として広がった。広がったあとに来るのは、共通語の文法変更だ。sessionless は思想というより、運用で先に証明された制約の成文化に近い。

Fable のクレジット枠が同じ月末に閉じるのは偶然かもしれない。だが読者側の行動は一つに収束する——7/28の破壊的変更リストを、自分のエージェントの接続コードに突き合わせること。機能の話をするのは、そのあとでいい。


出典(フォールバック収集:X API クレジット枯渇のため web 一次情報中心)